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■広報体制・アウトソーシング体制の築き方(2000.3)
   
 
筆者: 馬渕毅彦
※本稿は筆者が日商岩井(株)企画制作チームリーダー時代に、その立場から執筆したものです。
初出: 『編集者手帳・2000年3月号』(社団法人日本経営協会)。原題:「事例@多忙に負けない私の"仕事環境整備術"〜適切な環境整備に必要な"経営"の視点」(特集:社内誌編集者の「仕事環境整備学」)
掲載: 2001年10月5日
 
経営ビジョンが見えているか
 
日本のサラリーマンは忙しい。それも、生産性が高くて忙しいのではなく、なんだか無性に忙しい。なぜなのか?
 いちばんの原因は、おそらく経営トップにある。トップが明確な経営ビジョンを示さないまま、社内のさまざなま立場にある中間管理職が、それぞれの立場から"経営施策"を提案・推進し、それらがモザイク状に組み合わさりながら、何となく会社が運営されている――それがおそらく日本の大企業の大方の実態であり、このため経営効率が悪く、なにかにつけて時間が掛かる。
 もちろん、多くの企業は「企業理念」を掲げ、「経営計画」もちゃんと作ってはいるだろう。だけど、こうした類いのモノは今の日本では、なぜか実態を伴わない。カタチだけ整えている感が強い。
 そこで普段のシゴトは、こうした理念や計画とはぜんぜん別の世界で進行をすることになる。そこには全社統一的な判断の基準はない。だから皆が判断に迷い、多くの人間が集まって会議に無駄な時間を割いたりする。日本のサラリーマンが忙しい根本的な理由は、ここにこそありそうだ。
などとエラそうなことを言いながら、私だって、課員に対して社内報の編集方針をバシッと示しているわけじゃない。同じ穴のムジナではあるのだが、ただ私には「それは経営のビジョンがはっきり見えないからですョ」という言い訳がある。
 "多忙に負けない仕事環境整備術"の問題を対処療法ではなく、根本療法として考えるためには、ここら辺りから解きほぐしていく必要がありそうだ。が、テーマがあまりにも膨らみ過ぎるようなので、ここでは私自身が現在、実際に直面している2つの実例を紹介しながら"仕事環境整備"の問題を考えてみたい。1つは「アウトソーシング体制づくり」、もう1つは「グループ・アイデンティティ強化」への取組みである。
 
■会社から広報室がなくなる!?
 
 仕事環境の整備のなかで、予算とヒトは、おそらく最も大きなテーマだろう。私の職場もご多分にもれず、ここ数年、予算と人員の大幅削減を繰り返してきた。
 人員の削減については、これまでは単純にチーム員を減らす、あるいは一部のチーム員を外部の会社からの受入出向に切り替えるという方法で対処してきたのだが、会社側の要請はさらに厳しく、今年の4月からはいよいよ完全なアウトソーシング、すなわち私を含めてチーム員ゼロの体制で行なうことになった。いまはそのための、あれやこれやの準備に追われている。
 どういう体制かというと、まず、旧来の取引関係にある印刷会社に企画制作のための新会社を設立してもらい(日商岩井も一部出資予定)、その事務所を現在の広報室に隣接して設置する。そして広報室企画制作チーム員は、現行の5名を3名に減らしたうえで全員がこの新会社に出向する。それと従来の外注先スタッフ2名に新規採用2名を加え、新会社は総勢7人のメンバーでスタートする。
 日商岩井側から見れば、これは企画制作チームというチームがなくなり、広報室員が5人減少することになる。また新会社では、日商岩井の広報業務ばかりでなく、グループ企業その他からの広報業務の受託も行なっていくことになるから、結果として、日商岩井としては広報室予算の大幅削減が可能となるわけだ。
 「仕事環境の整備」という観点から言えば、より少ない人数と予算で同等の業務をこなしていかなければならないわけだから、私個人の立場から見れば、環境は年々"悪化"していると言わざるをえない。
だが広報活動というのは、いうまでもなく健全な企業活動を前提にはじめて意味を成しうるもの。会社の体力に見合った経営資源の配分がなされるべきは当然であり、そうした経営の視点に立った判断で物事を進めないと社内の支援は得られず、事態はどんどん泥沼化する。
 「仕事環境の整備」という言葉を聞くと、若い頃なら、自分自身とその周辺の問題だけを思い浮かべただろうが、そこだけでは、適切な環境は築けない。この問題に限らず、業務上の判断を行なうときには、いつも"経営"の視点を忘れないようにすることが大切だと思っている。
 
■グループ広報の流れの中で
 
 連結経営の時代を迎え、広報室のポジションにも変化が生じている。従来は、あくまでも日商岩井株式会社本体の広報室であったわけだが、今後は日商岩井グループとしての広報活動にも力を入れていく必要がある。
前述の新しいアウトソーシング体制づくりも、実は背景としてはこの辺りも絡んでいる。独自の広報組織を抱えることができないグループ企業に対し、小回りの利く広報関連サービスを提供していこうというものである。
グループ広報の流れのなかで、例えば4月からは従来の活字社内報をグループ報へと完全に移行する計画を立てている。もっともこの判断の背景には、イントラネット環境の整備という状況が一方にあり、単体広報はイントラを中心に行なっていくという構想とのパッケージになってはいるのだが。
 連結経営の流れに関していえば、いま取り掛かっている仕事の1つに「グループ・アイデンティティ強化のためのデザイン計画」というのがある。カンパニー制の導入等に伴って高まる遠心力に対し、グループとしての求心力を高めるために、グループのシンボル・マークを制定して名刺等のデザイン統一を図っていこうする計画だ。
この提案がうまく通れば、今後グループ企業は必然的にデザインの相談を広報室に持ち掛けてくることになる。となると、前述の新会社にどんどんビジネスが落ちてくる。そして新会社の仕事環境はみるみる改善されてゆく…という皮算用を描いているのだが。
 それはさておき、こうした作戦を上手く運んで仕事環境を整えてゆくためには、上司の力が不可欠となる。一介の課長職に出来ることは、たかが知れている。だから広報室長を動かし、広報担当役員を動かし、そして社長を動かす――こうした動きが執れるような環境づくり、あるいは自分自身の能力開発を日頃から行なっておくことが大切だと感じている。
 "仕事環境の整備"は、もちろんワタシにとって必要なことだ。だがそれを実現するためには、それが同時に会社のためになるものでなければならないし、そうでなければ、その実現はただただエネルギーを消費するばかりで、結局ワタシのためにもならない。
 人の世の因果は、まことに上手く出来たもののようである。
 
   
 
 
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